ささみの燻製、侮るなかれ。

ファッションを中心に、思ったこと

俺たちは雰囲気で音楽をやっている

楽器を弾いたことがあるだろうか。

 

ある人もない人も、では、Mr.Childrenサザンオールスターズ、どちらのギターの方がうまいか、聴き分けがつくだろうか。あるいはドラムだったらどうか。

 

はい、と答えられる人はなかなかいないだろう。

テレビ番組の格付けチェックを見ればわかるとおり、モノの良し悪しを語るというのは非常に高度なことだ。時には音楽を生業にしてる人でも、音楽についての問題を間違える。

 

僕は高校に入ってバンドを組み、のべ6年ほどギターを触って、数え切れないほどの音楽を聴いてきたが。

おもしろいほどに良し悪しがわからない。聴いたときに入ってくる音楽の解像度が低い。だいたいで気持ちよくなっている。

仲のいい友人は吹奏楽でも鍛えられた耳で、音楽についてのかなりの審美能力があるが、彼は「ここのギターがクーーッてきてドラムがグワーッて合わさってめっちゃいい感じなんよ」みたいなふわっとした説明をする。僕はその説明を聴くのが大好きだが、同じ感覚を共有できているかは結構怪しいところだ。

だいたいで気持ちよくなる、とはどういうことか。音楽というのはとてもパーソナルなものだ。意味不明なノイズと不協和音がギャンギャン鳴っている曲を人にオススメしていい顔をされた試しがない。

技術の高さ、という絶対的な指標が芸術の世界にもあるかのように論じられることは多々あり、たしかにそんな指標はとても大きな部分を、特にその中のコミュニティの人にとっては大きな意味を持っている。しかし、それは決して絶対的なものではない。俺たちは雰囲気で音楽をやっているのだ。

 

ジャンル、というものがある。ロックやクラシック、ジャズやヒップホップ、そしてそのロックの中にもパンクやラウド、オルタナなど無数のジャンル分けがある。音楽に限らず、メシなら中華やフレンチ、絵画なら印象派とかそういうやつだ。そういうジャンルというのは、構成上の特徴(死ぬほど歪んだギターがあればロック)だけではなく、その背景にあるカルチャーや物語をもさす。

そして、例えばパンクロックバンド一つをとっても、その背景にはカルチャーや物語がある。最近PK shampooというバンドを見つけた。代表曲の神崎川というのがある。僕の実家から徒歩圏内に神崎川があり、神崎川が歌詞に入った曲を聴いたのは小学校の校歌以来だ。PK〇〇、という言葉も、MOTHER2のファンならばそれだけでエモーショナルをかきたてられる。*

バンド名と曲のタイトルだけですでに自分のアイデンティティに近いと確信して、実際曲を聴いてみれば歌詞も演奏もPVもグッズも死ぬほど好みだった。マジでめちゃくちゃにいいから聴いてくれ、PK shampoo。ちなみにボーカルのヤマトパンクスはブログを読めばわかりますがドチャクソにクズでそんなところも最高です。

PK shampoo/神崎川

https://youtu.be/VgfvDWqSrZs

ヤマトパンクスのブログ

https://ameblo.jp/dx-o-xb/entry-12171721357.html

脱線してしまったが、要するに、一つのバンドを好きになるには、「ボーカルがクズだから」でも良いのである。もちろんそれだけではないが、要素として、ボーカルがクズなことは僕にとって間違いなくプラスに働いている。なんで僕は好きなバンドのボーカルを何度もクズと罵っているんだ…。とにかく、表現の良さ、というのは「技術」のみに依ることは全くなく、そこにはそのジャンルが背負う、そのバンドが背負う、そして自分が背負うカルチャーや物語が複雑に絡まり合って、「良さ」を重層的に作り出している。それは時に非常にパーソナルなものであり、彼女が歌を歌っていればそれが最高の音楽になったりするのです。

万人にとって、それぞれがそれぞれにとっての意味を持つ曲、というのはしばしば名曲と言われる。普遍的な良さを持つメロディや演奏というのもきっとあるのだろう。だけれど、自分が思った「良さ」を他人が否定することはできないのだ。

 

だから、皆さん、好きなものは胸を張って好きと言いましょう。俺たちは雰囲気で音楽をやっている。

 

 

*MOTHER2,また次作のMOTHER3というゲームでは、導入画面でカッコイイとおもうものを聞かれ、それがそのままPK"カッコイイモノ"として、主人公の必殺技となる。PKとは「Psyco Kinesiss( サイコキネシス)」の略。